長谷川栄雅と「日本の美」

2021.04.02

日本人の心を彩る「お花見」

春の大きな楽しみの一つといえば「お花見」です。日本では古くから桜が親しまれ、平安時代に書かれた『源氏物語』には貴族がお花見に興じる様子が記されています。また、農民の間では春の訪れを喜び、五穀豊穣を願うための祭事として山野で桜や花を愛でる「野遊び」「山遊び」が行われていました。

その後、江戸時代中頃になると庶民にも桜の木の下で宴を開く習慣が広がります。当時、この動きを利用して取り組まれたのが川の氾濫対策で、土手にたくさんの桜が植樹されました。その理由は大きく2つ。しっかりと広く根を張る桜で、土手を固めるため。そして、お花見に多くの人が集まることにより、土手が踏み固められると考えられたためです。いまでも各地に残る川沿いの桜並木の歴史は、こうして始まりました。

明治時代以降には明治維新、戦争などの影響により、桜は大きく減少することになります。しかし、事態を危惧した研究者や植木職人たちの手によって守られた種は大切に育まれ、日本の春を象徴する光景として今日まで人々の心を色鮮やかに彩っています。