長谷川栄雅と「日本の美」

2021.03.02

麗らかな春の情景を描く「菱餅」

3月3日は桃の節句。女の子がいるご家庭では健やかな成長と幸せを願い、ひな祭りが行われます。この祭事の始まりは、平安時代初期に古代中国から伝わった「上巳節(じょうしせつ)」。人形を川に流して厄払いするこの習わしがもととなり、その後、貴族の子どもたちの人形遊び「ひいな(ひな)遊び」と結びついて現在の形に発展し、江戸時代に庶民に広く定着したといわれています。

ひな祭りの食べ物として知られるのが、ひな人形のひな壇にも飾られる色鮮やかな「菱餅」。菱の葉が水面に広がることから成長、繁栄の象徴として用いられ、楽しいひな祭りに華を添えています。緑は新緑、白色は純白の雪、赤は桃の花を連想しているといわれており、その配色によって春の情景を表しています。例えば下から緑・白・赤に彩られた菱餅は、雪の下に新芽が芽吹き、桃の花が咲いている様子。その見た目と味わいに、一足早い春の訪れを感じることができます。