長谷川栄雅と「日本の美」

2021.02.17

心を優しくともす「和ろうそく」

室町時代に中国から伝わったとされる「和ろうそく」は、明治時代に安価な洋ろうそくが輸入されるまで、長く日本人の暮らしを照らし続けてきました。主に石油を原料とし、機械で大量生産される洋ろうそくに対し、和ろうそくは櫨(ハゼ)の実など植物性の原料を中心に、熟練の職人の手によって一本一本丁寧に作られています。

その魅力の一つが、大きく揺らぐ炎。まるで命や意思が宿っているかのように揺らめく炎は神秘的で、お供えものや神事の儀式といった用途に使われるのも和ろうそくならでは。これはろうの内部が空洞になっており、そこを空気が流れるためで、この造りによって洋ろうそくに比べ、火持ちもよくなります。

照明として用いられることは少なくなった和ろうそくですが、その優しい灯りは、忙しい日々の中で心に一時のゆとりをもたらしてくれます。