長谷川栄雅と「日本の美」

2020.12.08

新年へ向けて、一年の厄を祓う「正月事始め」

師走の慌ただしさが増す中、そろそろ正月支度について考え始める方も多いのではないでしょうか。現在ではあまり馴染みのない行事となりましたが、古くから日本では12月13日を年神様やご先祖様を迎える準備に取り掛かる「正月事始め」としてきました。

平安時代から江戸時代まで使用された「宣明暦」によると、この日は婚礼以外は万事に大吉とされる鬼宿日にあたり、その年の厄を祓い、清めるために江戸城で「煤払い」が行われたことから、江戸庶民にもこの風習が広がったとされています。

煤払いとは、いわば大掃除のこと。昔の日本家屋には竈や囲炉裏などが備えられ、薪、炭を火種に用いていたため、天井や壁に煤が付着してしまいます。そこで竹竿の先に藁を取り付けた「煤梵天」で煤を払い、掃除をしていました。時代の流れと共に、この作業はなくなりましたが、現在でも大きな寺社では煤梵天で仏像や社殿などを清める光景が見られます。

また、商家では煤払いが終わると、家人を胴上げして祝宴を開いたと伝えられ、賑やかな行事の一つだったようです。

この他に正月事始めでは、門松や松飾りに使う松を年男が恵方の山で採る「松迎え」、おせち料理作りなどが行われ、新年を迎える用意が着々と整えられていきます。