長谷川栄雅と「日本の美」

2020.11.18

秋の深まりを楽しむ「紅葉狩り」

赤や黄、橙など、色鮮やかに染められた山肌を愛でる「紅葉狩り」。奈良時代に書かれた『万葉集』には「黄葉(もみち)」の二文字が記されていますが、それは厳しい冬に向かうことの象徴であり、華やかなものとして観賞する風習はなかったとされています。人々が紅葉狩りを楽しむようになったのは、室町時代以降、特に江戸時代になると旅行が流行したこともあり、一躍人気の風習となりました。実際に、現在の旅行ガイド本のような位置付けだった『都名勝図会』に紅葉の名所が掲載されると、そこにはたくさんの人々が押し寄せ、美しい風景とお弁当やお酒を堪能していたようです。また、その頃になると着物のあしらいにも紅葉が象られるようになりました。

紅葉狩りの「狩り」という言葉には、鳥や動物を捕らえる狩猟という意味のほかに、魚や貝、季節の植物を求め、その美しさを観賞するという意味があります。なお、後者の行為に「狩り」が使われるようになったのは、平安時代、狩猟をしない貴族が多くなったことが由来とされており、わざわざ足場の悪い山野へ向かい、紅葉を眺める贅沢を狩りに例えたともいわれています。

今年は、野外での観光が盛んです。ぜひ紅葉の名所を巡り、秋の深まりを味わってみてはいかがでしょうか。