長谷川栄雅と「日本の美」

2020.10.14

一年の豊穣に感謝する「神嘗祭」

神嘗祭

ハロウィンやオクトーバーフェストなど、すっかり日本に定着しつつある世界の収穫祭。しかし、国内にも秋の恵みに感謝する伝統行事があることをご存知でしょうか。

創建約2000年の歴史を誇る伊勢神宮を舞台に、毎年10月15日から行われる宮中祭祀「神嘗祭(かんなめさい)」です。

神嘗とは「神の饗(あえ)」が変化した言葉とされていますが、「饗」の語源には諸説あり、食べ物でもてなすという意味、 新殻を表す贄(にえ)が転じた言葉などと伝えられています。

この祭典は神宮で催される約1500もの年間行事の中で最も由緒が深く、これに合わせて装束・祭具が一新されることから「神宮の正月」とも称されます。

神嘗祭は日本神話に由来し、その年の最初に収穫された稲穂「初穂」を誰よりも先に天照大御神に捧げて一年間の収穫への感謝を示すと共に、皇室の弥栄、五穀豊穣、国家の隆昌、国民の平安を祈願する行事です。

祭典では天皇陛下の使者である勅使を迎えて奉仕する「奉幣の儀」、「興玉神祭(おきのたまかみさい)」など、さまざまな儀式が執り行われますが、その中でも中心となるのが両正宮(外宮・内宮)で行われる「由貴大御饌(ゆきのおおみけ)の儀」です。「大御饌」とは立派な食事という意味で、「外宮先祭」の習わしに則り、16日は豊受大神宮(外宮)、17日には皇大神宮(内宮)で午後10時・午前2時の二度にわたり、新穀の御飯・御餅・神酒を始め、海の幸、山の幸をお供えします。

なお、祭典が終わる25日まで両正宮の内玉垣には、全国の農家から奉献された稲束「懸税(かけちから)」が懸けられており、美しい黄金色の稲が並ぶ光景からは、古来日本の食文化を支えてきた御米の有り難さを感じ取ることができます。