長谷川栄雅と「日本の美」

2022.12.27

新年へ心をあらためる「大晦日」

2022年も残すところ、あと僅かとなり、当たり前のように使われている「大晦日」という言葉。しかし、その語源や意味合いはあまり知られていません。今回は新年の十二支とともに、知られざる大晦日についてご紹介します。

新年の始まりと考えられていた大晦日

毎年12月31日の「大晦日」は、「大つごもり」とも呼ばれます。この呼び方は各月の末尾を指す「晦日」のもととなった「晦(つごもり、みそ)」から派生した言葉です。晦は月が隠れると状態を表す「月隠り」の音が変化したもの。日本では明治時代の改暦まで、月の満ち欠けによって日付を決める旧暦が使われており、その頃は新月を1日とし、月が見えなくなる30日が月末でした。その後、新暦が採用されると月末が31日になるケースも生まれたため、以降、毎月の末日を晦日と呼び、その中でも1年の最後の晦日を大晦日と呼ぶようになりました。

大晦日は、元旦に新年の幸運をもたらしてくれる年神様をお迎えし、祀るための準備を行う日だとされています。かつて日本では、一日の始まりは夜明けで、それから朝が続いていくと考えられていたため、大晦日は新しい年の始まりでもあり、さまざまな準備が行われます。

 

大晦日の習慣

歳神様を迎え、また新年を穏やかな気持ちで迎えるために、大晦日には古くから多くの習慣が残っています。その中から代表的な3点をご紹介します。

1.年越しそば

大晦日の習慣の中でも、最も親しまれているものの一つである「年越しそば」。これは江戸時代に始まったといわれ、麺の形状から「細く長く生きられるように」という縁起が込められています。また、蕎麦は切れやすいことから、「一年の災厄を断ち切る」といった意味があります。具材は各地域で異なり、めでたさを表す「紅白かまぼこ」や長寿を願う「えび」、金運を向上する「卵焼き」といった縁起物が人気。香川県や群馬県など、一部の地域では蕎麦のかわりに、うどんが食べられることもあります。

2.年の湯

大晦日に入るお風呂のことを「年の湯」や「除夜の湯」と呼びます。現在と異なり、昔は毎日入浴する習慣はありませんでした。そのため大晦日という特別な日に入浴することで、一年の厄を落とし、綺麗な状態で新年を迎えるという意味が込められていました。

3.除夜の鐘

外から除夜の鐘の音色が聞こえ始めると、いよいよ年越しの実感が湧いてきます。除夜の鐘は鎌倉時代に中国から伝わったのが起源で、その後、全国へ広まりました。鐘を撞く108回は、仏教で人の煩悩の数。その数を鳴らすことで、煩悩を取り去り、新年を迎えられるといわれています。

 

卯のように飛躍する一年に

2023年は卯年です。卯は穏やかな性格の動物であることから「家内安全」、またその動きから「飛躍」「向上」の年になるといわれています。また、「卯」という文字は門が開いている様に見えることから、「冬の門が開いて飛び出る」という意味があると伝えられ、さらに「茂」の字が由来とされているため、春の訪れを予感させます。その言い伝え通り、新年がいい年になることを願って、大晦日を過ごしてみてはいかがでしょう。