長谷川栄雅と「日本の美」

2021.12.30

春の訪れを願う「寅年」

2021年もあとわずか。来年の干支は「寅」です。日本には生息していない虎ですが、その存在は古くから知られていました。『万葉集』には虎を詠んだ和歌がいくつか残り、『日本書紀』には百済に派遣された武人・膳臣巴提便(かしわでのおみはてび)が虎を退治し、その皮を日本に持ち帰ったという話が記されています。

生きた虎が日本に初めて輸入されたのは890年。猫好きだった宇多天皇が、虎の写生を命じたと伝えられています。その後は、豊臣秀吉や徳川家康といった時の権力者に献上されるなど、虎は強さの象徴として扱われてきました。

そのため庶民が虎を見る機会はあまりなく、江戸時代になると虎が見世物になることもありましたが、自由に見ることができるようなったのは明治時代以降に動物園が誕生してからでした。

ちなみに「寅」の字は、「春が訪れ、草木が息吹く状態」から派生したといわれています。

今しばらく続く我慢の時を超え、2022年には気兼ねなく、美味しいお酒を酌み交わせる日が訪れることを願いたいと思います。