長谷川栄雅と「日本の美」

2021.12.11

かつては夏の飲み物だった「甘酒」

栄養が豊富なことから「飲む点滴」ともいわれる「甘酒」。現在では冬の飲み物としての印象が強い甘酒ですが、古くは夏に飲むことが一般的で、実は夏の季語になっています。

甘酒の起源には諸説あり、奈良時代に書かれた『日本書紀』には2つの逸話が見られます。一つは、吉野の民が応神天皇に捧げた醴酒(こさけ)がルーツだとするもの。醴酒は宮中に納める酒のことで夏季に造られ、室町時代の書物にも貴族が夏に飲んでいたと記されています。そしてもう一つが、女神である木花咲耶姫(このはなのさくやびめ)が醸した「天甜酒(あまのたむさけ)」がはじまりとするものです。名前の「木花」が「梅の花」を指すことなどから、後に江戸では梅鉢の看板が甘酒屋に掲げられました。

甘酒が冬の飲み物として扱われるようになったのは、江戸時代の中頃。松尾芭蕉の「寒菊や 醴造る 窓の前」という俳句や、当時の笑い話を編纂した「噺本」には冬の描写に甘酒が登場します。しかし、これらの様子が見られたのは、主に江戸の町でのこと。江戸では四季を問わずに甘酒が飲まれていたものの、関西では古くからの宮中の慣習にならい、夏の飲み物というイメージが深く定着していました。