長谷川栄雅と「日本の美」

2021.11.06

海外で“ジャパン”と称賛された「漆」

見た目を鮮やかにするだけではなく、耐水性や接着性を高める「漆」。食卓のお椀から祭事に用いられる重箱、工芸品や芸術品まで、さまざまな形で日本の生活や文化を支えてきました。

その歴史は深く、約1万年前の縄文時代には服飾品、弥生時代には農耕具や器などに使用されていたと考えられています。さらに飛鳥・奈良時代から平安時代にかけては、寺院や仏具、彫刻など日用道具以外でも用いられるようになり、鎌倉・室町時代には螺鈿や蒔絵の技術も向上しました。

江戸時代になると、石川の輪島塗や青森の津軽塗など各地で発展。輸出品としても重宝されるようなり、海外では漆器や漆塗りの美しさが称賛され、「ジャパン」「ジャパニング」などと呼ばれるようになりました。その後は西洋化の流れやプラスチック製品の普及により、生産量や制作者は減少の一途を辿りますが、未来に残したい日本の伝統として、その匠の技が受け継がれています。