長谷川栄雅と「日本の美」

2021.09.17

昔は塩味だった「あんこ」

秋分の日におはぎをお供えするなど、日本の文化や暮らしに深く結びついている「あんこ」。その起源は弥生時代の小豆料理といわれ、小豆の赤い色が魔除けとして邪気を払うと信じられており、無病息災や魔除けを祈願して食べられていました。その後、中国から点心が伝わり、小豆はすり潰され、現在のあんこのような形で食べられることが多くなりましたが、当時は塩味が一般的で僧侶が肉の代わりにしていたとも考えられています。

あんこが甘くなったのは、室町時代から安土桃山時代にかけて。武士や貴族の間で茶の湯が流行したことから和菓子が発展し、その中で砂糖を加えたあんこが作られるようになりました。江戸時代には南蛮貿易により砂糖の輸入量が増え、国内でも幕府が砂糖の生産を推し進めるように。どら焼きや羊羹など、現在でも親しまれている和菓子もこの頃に誕生し、その味わいが庶民にも広がりました。