長谷川栄雅と「日本の美」

2021.08.06

海外でも重宝される「蚊取り線香」

暑い日に「蚊取り線香」から一本の煙が立ち上る光景やその匂いは、日本の夏の風物詩のひとつです。蚊取り線香が普及する以前、平安時代から大正初期まで蚊などの虫対策としては「蚊遣火(かやりび)」が一般的。松、杉、カヤの木、よもぎの葉などを燃やした煙で蚊を追い払うもので、現在も俳句では夏の季語となっています。また、寝る際には奈良時代に中国から伝わった「蚊帳(かや)」も使われていました。

世界初の蚊取り線香が誕生したのは1890年。線香から着想を得て、アメリカの除虫菊の種子を製粉し、棒状の蚊取り線香が発明されました。さらに1895年には効果を持続させるために渦巻き型のものが完成。この頃、蚊取り線香は手作りされていましたが、1950年代後半になると機械での大量生産が可能になりました。そして現在では日本だけではなく、蚊が媒介する感染症に悩まされている東南アジアやアフリカなどの海外でも重宝されています。