長谷川栄雅と「日本の美」

2021.07.09

日本の夏の風物詩「団扇」

「団扇(うちわ)」の原型である「翳(さしば)」が中国から日本へ伝わったのは6、7世紀頃の古墳時代。飛鳥時代に築かれた高松塚古墳の壁画には翳を手にした人物の姿が描かれており、当時は宮廷の貴女が顔を隠すためなどに使用していました。

10世紀頃になると翳は団扇と呼ばれるようになりますが、この語源はハエや蚊を追い払ったり、叩いたりする、「打つ翳(うつわ)」から派生したものといわれています。このように団扇は、古くは風を仰ぐためのものではなく、祭事の儀式や占いの道具として、戦国時代には戦を指揮する軍配として活用されていました。

現在のように使うようになったのは江戸時代。日常道具として庶民に広まったことで炊事に使われたり、涼を取るために用いられるようになりました。その後、明治時代になると商家や寺社などの広告媒体としても利用され、昭和に入るとそれまで主に木や竹で作られていた団扇にプラスチック製品が登場。大量生産が可能となり、今日の形へ進化しました。