長谷川栄雅と「日本の美」

2021.06.03

後世に残したい伝統美「和傘」

木や竹、糸など自然の素材で組まれた骨組に、和紙を貼り付けて作られる「和傘」。その種類には雨傘として用いられる「番傘」や「蛇の目傘」、その他に「日傘」「舞傘」などがあります。

和傘は平安時代前後に、仏教や漢字などの文化と共に中国から伝来した「天蓋」が原型といわれています。天蓋は貴族などが日除けや魔除けとして使っており、それが後に日本で独自の発展を遂げました。当初、和傘は現在のように開閉することができませんでしたが、鎌倉時代から室町時代にかけて棒などを使って開閉できるものが誕生し、さらに和紙に油を塗ることで防水加工が施され、雨具として使われるようになりました。

和傘が庶民に広まったのは江戸時代。器具の開発によって自由に開閉できるようになり、大阪の大黒屋が「大黒番傘」を製造。これが江戸に伝えられたところ、丈夫で安いことから流行し、江戸で「番傘」と呼ばれるようになりました。

その後、明治時代以降は洋装が主流となったことで和傘の生産は減少し、洋傘を持つことが多くなりました。現在では料亭や旅館、茶席など、限られた場面でしか見られず、全国の職人の数も少なくなっていますが、その雅な美しさはこれからも残したい日本の伝統です。