長谷川栄雅と「日本の美」

2021.05.20

古くから愛される「手ぬぐい」

汗をぬぐったり、埃よけとして頭にかぶったり、怪我をしたときには包帯代わりにもなる便利な「手ぬぐい」。その歴史は古く、奈良時代には原型となる麻や絹を素材にした平織り物が存在し、主に仏像などの清掃に使用されたといわれ、平安時代には身分の高い人たちが祭事などの際に手ぬぐいを身に纏っていました。平安時代末期の説話集『今昔物語』には「手布(たのごい)」という表記が残っています。

その後、手ぬぐいは徐々に庶民にも普及していきますが、現在、使われているような綿のものが普及し始めたのは江戸時代。それまで中国からの輸入品で高価だった綿が、日本でも栽培されるようになったことが要因です。歌舞伎役者を描いた浮世絵にも手ぬぐいが見られ、町には「手拭染屋」という専門の染屋が誕生するほど染色技術が高められました。さらに明治時代には、さまざまな図柄に染められるようになりましたが、西洋からタオルやハンカチが伝わり、手ぬぐいは衰退の一途を辿ることに。

しかし、近年ではその機能性や優しい肌ざわりなどが見直され、現代らしいデザインの手ぬぐいが続々と登場。バッグ、小物などにアレンジしたものやインテリアとして再び人気を集めています。