長谷川栄雅と「日本の美」

2021.05.07

歴史深いジャパンブルー「藍染め」

その美しい色合いから衣類やバッグなど、幅広い商品に用いられている「藍染め」。藍は人類最古の染料といわれ、日本には奈良時代に中国から朝鮮半島を経由して伝わり、高貴な色として上流貴族が藍染めされた絹の衣類を纏っていました。奈良の正倉院には、大仏の開眼供養会で使用された絹の紐「開眼縷(かいげんる)」が保管されており、これは日本において現存する最古の藍染めです。

鎌倉時代になると、武士が着物や鎧の糸などに「褐色(かちいろ)」といわれる藍を好むようになります。これは藍に解毒や止血の作用があること、褐色が「勝ち」を連想させ、縁起がいいとされたためです。

藍染めが庶民にまで広まったのは江戸時代。藍が染まりやすい木綿が普及したことから、衣類をはじめ、のれんやのぼりなどの布製品が藍色に染められました。

明治時代にはその光景を目の当たりにした英国人が「ジャパンブルー」と表現するほど、藍染めは日本人の暮らしに根差していました。その後、藍はインディゴの輸入や戦争の影響を受け、消滅の危機に瀕しますが、藍を生産する藍師や染師が種を守り、独自の文化と歴史を今日まで伝えています。