長谷川栄雅と「日本の美」

2021.12.04

“ハレの日”に食べられていた「豆腐」

ヘルシーな和食として、海外でも人気の「豆腐」。寒い季節には、からだを芯から温めてくれる湯豆腐が恋しくなります。

豆腐が中国から日本に伝わったのは奈良時代頃といわれており、鎌倉時代の書物の中には「唐符」の記述が見られます。その頃は主に僧侶が、その後、精進料理の普及と共に貴族や武士が口にするようになり、奈良や京都から全国へ広がっていきました。

江戸時代初期になると、庶民にも豆腐が広がりはじめます。天明2年には「豆腐百珍」という豆腐料理専門の書籍が刊行され、続刊も登場するほどの人気に。しかし、この頃も特に農民にとって豆腐は贅沢品で、農村では祭りや正月、冠婚葬祭といった「ハレの日」しか味わうことができませんでした。徳川家康と二代将軍・秀忠の時代には、農民が豆腐をつくることは禁じられており、三代将軍・家光が農民統制のために発令した「慶安御触書」にも、その旨の記述が残っています。その後、江戸時代の中頃になり、ようやく大都市の庶民の間でも日常的に豆腐が食べられるようになりました。